お役立ちコラム

適切なサンプルサイズが調査成功の鍵|計算方法や決め方を解説

適切なサンプルサイズが調査成功の鍵|計算方法や決め方を解説

サンプルサイズとは、母集団の一部から抽出したデータであるサンプル(標本)内の対象の数です。アンケート調査にて結果の信頼度を高めつつ、精度とコストのバランスを取るためには、サンプルサイズの適切な設計が欠かせません。

とはいえ、適切なサンプルサイズとはどの程度なのか、どのように決めるべきか、悩む方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、調査に欠かせないサンプルサイズの計算方法、決め方、注意点を解説します。

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サンプルサイズとは母集団から抽出したサンプル(標本)の個数

サンプルサイズとは、母集団の一部から抽出したデータであるサンプル(標本)内の対象の数のことです。サンプルサイズはn、母集団はNで表されます。

サンプルとは

サンプルとは、母集団(調査の対象となる集団の全体)の一部分を、調査のために選び出した対象のことです。母集団全体を調査するのが困難な場合に行われるサンプル調査(標本調査)で活用されます。

サンプル調査とは

サンプル調査と全数調査の比較|サンプル調査:サンプルの一部のみ調査、全数調査:サンプルすべてを調査

母集団全体を対象とした調査は、時間や調査コストの負担が大きくなり、難しい場合もあります。そのため規模が大きい調査では、母集団全体を調査するかわりに、抽出したサンプルを対象に調査を行うことが一般的です。このような調査方法を、サンプル調査と呼びます。

例えば、東京に住む人の平均年齢を知りたいとしましょう。都内在住のすべての人に対して年齢を調査するのは、現実的ではありません。そこで、東京に住む人(=母集団)から一部を抽出(=サンプル)して調査することで、母集団全体に関する情報を推測します。

このようにサンプル調査は、時間や調査のコストを節約しながら、母集団全体の特性や傾向を探ることができる手法として広く利用されています。ちなみに、身近なサンプル調査の例としては、選挙の出口調査や、テレビ番組の視聴率調査があります。

サンプルサイズとサンプル数の違い

サンプルサイズに似た用語に、「サンプル数」があります。サンプル数は、サンプルの抽出を実施した回数です。一方、サンプルサイズは、1回のサンプル抽出で調査した個体の数を意味します。

サンプル数とサンプルサイズの違い|A社:500人、B社:400人、C社300人|サンプル数:A社、B社、C社の3社→サンプル数は3|サンプルサイズ:A社の人数は500人→A社のサンプルサイズは500

例えば、グループ会社ごとの従業員満足度調査を実施するとしましょう。A社には500人、B社には300人、C社には400人が在籍している場合、サンプル数は3になります。また、サンプルサイズは、A社が500、B社が300、C社が400となります。

なお、サンプル数とサンプルサイズの違いについては、「サンプリングとは?統計調査での活用法や種類、注意点を解説」でも解説していますので、併せてご覧ください。

サンプルサイズの適切な設計はなぜ必要か

サンプルサイズを適切に設計すれば、調査結果の信頼度を高めつつ、コストと正確性のバランスを取ることができます。

サンプルサイズの大きさによる違い|サンプルサイズ大:分析結果の正確性=高い、調査コスト=高い|サンプルサイズ小:分析結果の正確性=低い、調査コスト=低い

サンプルサイズは、大きさによって調査のコストと正確性にトレードオフの関係が見られます。

サンプルサイズが少なすぎると、調査コストは抑えられるかもしれませんが、母集団の実態との誤差が大きくなってしまいます。そのため、調査結果が信頼できるものかどうかがわからなかったり、思うような結果を得られなかったりして、再調査の実施など追加のコストがかかる場合もあります。

反対にサンプルサイズが大きすぎると、調査コストが高くなるだけでなく、回収に時間を要することになりやすいです。さらに、本来あまり考慮しなくてよい差まで抽出してしまい、本質的な部分が見えにくくなるかもしれません。

このように、サンプルサイズが適切でないと、調査結果の信頼度に影響を与えたり、余計な調査コストが必要になってしまう可能性があります。ちなみに、以下の場合は必要なサンプル数が大きくなる傾向があるため注意が必要です。

▼サンプルサイズが大きくなりやすい場合

  • 母分散(標本分散)が大きい
  • 信頼水準を高く設定している
  • 許容誤差が小さい

なお、マーケティングリサーチにおける調査設計については、「マーケティングリサーチにおける調査設計のポイントは?手順やアンケート作成のコツも解説」で詳しく解説しています。

サンプルサイズを決めるまでの3ステップ

サンプルサイズの適切な設計が重要であるとは理解したものの、どの程度のサンプル数を抽出すべきか、サンプルサイズの設定に悩んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。

本章では、以下3つのステップに分けて、サンプルサイズを設定する流れを解説します。

1.アンケートの母集団を決定する

サンプルサイズを決めるには、まずアンケート調査の対象となる母集団を決定しましょう。

例えば顧客満足度を調査する場合、自社の商品を利用しているユーザーを母集団とします。また、50代の女性に対する商品の認知度を知りたい場合は、「50代女性」を母集団としましょう。

大切なことは、調査の目的に応じて、適切な母集団を決定することです。母集団は、調査結果の精度に影響を与えます。調査の対象となるグループを明確にすれば、調査対象に適した質問項目やアンケートの設計が可能となり、調査結果もより具体的で有用なものになるでしょう。

なお、アンケート調査票の作り方は「成果が出るアンケート調査票の作り方は?具体的な作成ステップを解説」にて細かに解説しています。

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2.許容誤差と信頼水準を決定する

次に、許容誤差と信頼水準を決定しましょう。

  • 許容誤差(E)
    →母集団とサンプルの誤差を許容できる範囲
  • 信頼水準(Z)
    →同じ母集団からサンプルを繰り返し抽出する場合に、母数(母比率や母平均)が含まれる区間のパーセント

サンプル調査は全数調査と違い、調査結果から母集団の特徴や傾向を把握する調査です。調査結果には必ず母集団とのズレが生じます。そのため、あらかじめどの程度の誤差は許容するのか、抽出する際の母数はどの程度信頼できるのか、基準を設けることが重要なのです。

なお、マーケティングリサーチを含めて、多くの場合信頼水準は95%が採用されています。これは、100回調査すれば95回は真の値を含んだ調査ができるということです。ちなみに5年ごとに実施される国勢調査では、許容誤差を5%、信頼水準を95%としています。(参考:総務省統計局「調査に必要な対象者数」)

3.必要なサンプルサイズを決定する

許容誤差と信頼水準を決定したら、いよいよ必要なサンプルサイズを決定します。

許容誤差が少ない、もしくは信頼水準が高い場合は、より正確な調査結果が得られます。ただ、その分サンプルサイズは大きくなりがちです。つまり、誤差を小さくするためには多くのサンプルが必要になります。反対に、許容誤差を緩める、もしくは信頼水準を下げると、必要なサンプルサイズは減少します。ただその分、調査結果の精度は低下する恐れがあります。

以上を踏まえて、適切なバランスを見極めながら、調査の目的や予算に合わせてサンプルサイズを決定しましょう。

サンプルサイズの計算式

マーケティングリサーチにおいては、信頼区間に基づいてサンプルサイズを決定することが一般的です。また、計算方法には母比率からの計算、母平均からの計算の2種類があります。

計算式で用いられる統計用語についても記載していますので、あわせてご確認ください。

サンプルサイズの計算式|母比率からの計算式|母平均からの計算式
n サンプルサイズ δ 信頼係数
2 標準正規分布の上側α2点の値 2 標準正規分布の上側α2点の値
p 母比率 s 不変分散
α 許容する標本誤差の幅 d 許容する標本誤差の幅
  • 標準偏差
    →母集団の異質性を示す分散の平方根
    参考:「標準偏差とは?ビジネスでの活用方法と求め方を解説
  • 許容誤差
    →母集団とサンプルの誤差を許容できる範囲
  • 信頼水準
    →同じ母集団からサンプルを繰り返し抽出した場合に、母数(母比率や母平均)が含まれる区間のパーセント
  • 母比率
    →母集団においてある事象が起こる確率

リサーチにおけるサンプルサイズ決定の注意点

サンプルサイズを決定する際には、以下の3点について注意しなければなりません。

サンプルサイズの目安は、信頼性を損なわない数値とする

アンケート調査においては、一般的に400サンプルが目安と言われていますが、最適なサンプルサイズは、信頼係数の水準や許容する誤差によって異なります。

信頼性を高めるためにはより多くのサンプルが必要になる場合もあれば、誤差を許容しながらコストを抑えるためには少ないサンプルでも十分な場合もあります。そのため、信頼係数や許容する誤差を考慮しながら、調査の目的や予算に応じて最適なサンプルサイズを決定することが重要になります。

なお、信頼性については、「信頼性と妥当性との違いとは?適切なサンプルサイズの考え方も解説」で詳しく解説しているので、参考にしてください。

調査実施時には、サンプルサイズとあわせて回収率も考慮する

サンプルサイズを適切に設定すると、分析結果の正確性とコストのバランスが取れた調査結果を得られます。このとき、回答者の偏りやサンプル不足に陥らないよう、前もって回収率も考慮しておくことが重要です。

想定したサンプルサイズとアンケート配信数が同じだと、もし回収しきれなかった場合に、追加の調査が必要になる場合もあります。全てのアンケートを回収できない可能性を事前に想定し、サンプルサイズよりも多めにアンケートを用意・配信するようにしましょう。

アンケートの回収率は、アンケートの内容や回収方法によって異なりますが、もし回収率を高めたいならば、アンケートの対象者に対して興味を持ってもらうための質問や、回答を提出しやすい便利な回収手段を用意することが有効です。

まとめ|サンプルサイズの決定は分析精度とコストのバランスを取るため重要

サンプルサイズは、母集団から抽出するサンプル(標本)内の対象の数を指します。大規模な調査では、母集団全体を調査するとコストがかかるため、抽出したサンプルだけを調査することが一般的です。

ただ、サンプル調査では、サンプルサイズが少なすぎると、母集団の実態との誤差が大きくなります。一方サンプルサイズが大きすぎると、実施コストが高くなる上に、場合によってはコストに見合うほど精度向上は実現できません。

そのため、分析精度とコストのバランスを考えて、最適なサンプルサイズを選ぶことが重要です。コストを抑えながらサンプルサイズを確保したい場合は、オンラインアンケートが有効です。なお、手軽にアンケートを始めたい方には、GMO Askの活用をおすすめします。

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よくある質問

Q1.サンプルサイズの適切な設計はなぜ必要?

サンプルサイズの適切な設計は、結果の信頼度を高め、コストと精度のバランスを取るために必要です。
サンプルサイズが少なすぎると、母集団との乖離が大きくなり、結果の信頼度や分析精度が下がってしまいます。反対にサンプルサイズを大きくしすぎると、コストや分析の煩雑さが生じます。

詳しくは、「サンプルサイズの適切な設計はなぜ必要か」をご覧ください。

Q2.サンプルサイズを決定する際の注意点は?

まずは、調査の信頼性を損なわないためにも、計算式を用いて一定以上のサンプルサイズを確保しましょう。また、アンケートを全て回収できるとも限らない点も留意すべきです。回収率も考慮して、多めにアンケートを配っておくことをおすすめします。
かといって、サンプルサイズが多すぎるとコストがかさんでしまうなど別の問題も生じることもあるため、注意が必要です。

詳しくは、「リサーチにおけるサンプルサイズ決定の注意点」をご覧ください。

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