大学生が卒業論文を執筆する際に活用される調査の一つに、アンケート調査があります。アンケート調査を行うと、自身の主張に説得力をもたせたり、調査対象である人の意見や行動の裏付けをとったりすることができるため、活用を検討している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、卒業論文執筆でアンケート調査を活用したい大学生に向けて、アンケート調査の実施方法や実際の流れなどを解説します。「アンケート調査を自身で行ったことがなく、どのように行えばよいかわからない」「幅広い世代・所属の人から回答を集めたいが、どの程度の回答数を見込んでおくべきだろうか」と不安を抱える方は、ぜひご覧ください。
卒業論文の執筆時にアンケート調査を実施する目的
卒業論文では、自身でテーマを設定したうえで研究や調査を行い、既存の研究とは異なるオリジナルな主張が求められます。
独自の研究成果を生み出すために役立つのが、アンケート調査です。アンケート調査を行うと、調査対象者の意見や行動を数値化できるため、自身の主張に説得力をもたせることができます。また、既存の文献だけでは見いだせないデータを得られることもあるため、研究成果に至るまでのプロセスに独自性が生まれます。
アンケート調査は、学生生活の集大成となる卒業論文について、オリジナリティを出しつつ論理的に主張することを目的に実施されます。
アンケート調査に適しているテーマ、適さないテーマ
卒業論文を執筆する際、アンケート調査が適しているテーマと適さないテーマがあります。
適しているテーマ | 適さないテーマ |
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アンケート調査は「人」を対象とするため、社会学や心理学など、考え方の傾向や経験を知りたい場合に適しています。また、自身が求めているデータに関する文献などが見当たらない場合にも、アンケート調査の実施が必要になることがあります。
一方で、調査対象者が極端に少なかったり、テーマが人に関連しないものの場合は、アンケート調査以外の方法で情報収集することをおすすめします。例えば理系の場合、実験や先行研究の資料や実験結果が重要になるでしょう。
アンケート調査の実施は、時間も費用も要します。自身が着手するテーマに必要な情報はアンケート調査で得られるのかを確認したうえで、実施するかどうか決めましょう。
卒論のためのアンケート調査を行う方法
アンケート調査を行う方法は主に3つあります。この章では、それぞれの方法のメリット・デメリットを併せて解説します。
1.セルフ型アンケートツールを利用する
1つめの方法は、セルフ型アンケートツールを活用する方法です。アンケートをWebで作成し、登録済みの調査モニターに回答してもらうことで結果を得るものです。
調査会社への依頼に比べるとスピーディに結果を得られるため、短期間でデータを得たい際にはおすすめです。また、アンケート配信から回答の回収までシステム内で完結しているサービスも多いため、スムーズに調査を行うことができます。
しかし、調査票の作成から集計まで、すべて自身で行う必要があるため、アンケート調査に関する知識をもっていないと、思うような成果を得られないこともあります。
2.調査会社に依頼する
2つめの方法は、調査会社に依頼する方法です。アンケートの設計から集計まで、調査のプロである調査会社からアドバイスを受けられるため、大きな失敗を避けて調査を行えるでしょう。また、希望に応じて分析やレポート作成まで依頼できます。
初めてのアンケート調査で勝手がわからない、系統的な結果が得られるかどうかが不安という場合におすすめです。
しかし、サポートが手厚いぶん、調査にかかる時間とコストが大きくなりがちです。調査に時間がかかることで「中間発表の締め切りに間に合わない」「指導教員のチェックが間に合わない」という事態にならないよう気をつけましょう。
予算や時間をかけて本格的に調査したい場合や、大学側から費用を出してもらえる場合におすすめです。
3.周囲の人に依頼する
3つめの方法は、知り合い、友達、家族など周囲の人に依頼する方法です。Googleフォームでアンケートを作成したあと、SNSで共有するなどして実施できます。
費用をかけずに実施できるため、本調査の実施前に、傾向を確認しておきたい場合におすすめです。しかし「建築業の人500人に聞きたい」など、調査対象者の設定に条件がある場合には十分な回答を得られない場合が多いため不向きです。
また、SNS上での調査実施となると、回答者の属性が「SNS利用者」に限定されてしまいます。意図せず偏った対象者となってしまう場合もあるため、注意して活用しましょう。
【実践|卒業論文向け】アンケート調査の実施の流れ
ここまで、アンケート調査に適したテーマや、調査方法ごとのメリット・デメリットについて解説してきました。この章では、卒業論文のためのアンケート調査を実施する流れについて解説します。
1.アンケートの目的を決める
「何を知りたいのか?」「自身の主張のために、どんなデータがほしいのか?」など、まずは調査の方向性を決めましょう。
「〇〇について調べる」という調査の大枠はもちろん、「◯◯について、~~という仮説が考えられる。そこで、仮説立証のためのデータを集める」のように、より詳細に目的を決めておきます。後に作成する調査項目や対象者設定がブレにくくなり、設問数も必要最低限に絞れるため、調査にかかる費用やコストを抑えて必要なデータを集めやすくなります。
▼アンケート目的の設定例
悪い例 | ピアノを習う子どもの人数と費用について調べる |
---|---|
良い例 |
【仮説】
【検証方法】
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対象者を決める
目的を決めたら、次は誰を対象に調査するかを決めます。
アンケート調査では、対象となる人を総称して「母集団」と呼びます。母集団は、年齢や性別、職業などの属性や地域などによって切り分けることができるもので、条件によって調査結果にも違いが表れます。
前項で設定した仮説を立証するのに必要なデータが何かを考えたうえで、母集団を設定することが重要です。
▼母集団の条件例(研究テーマ「ゲーム機の色と子どもの購買意欲の関係」の場合)
- 子どもの年齢(何歳から何歳まで、など)
- 性別(男女均等、など)
- 家庭環境
- 地域
条件設定を細かくしすぎてしまうと、思うような調査対象者数を得られないことがあるため注意が必要です。
調査方法を決める
対象者を決めたら、先述の3つの調査方法の中からどの方法で調査するかを決めます。アンケートの形式として「Web上の実施」「紙面での実施」のどちらにするかも、このタイミングで決定してください。
アンケート調査をWeb上で行うメリットは、アンケートの作成から集計まで誰でも簡単に実施できる点です。例えばGoogle Forms®を使うと、アイコンをクリックするだけで質問形式を決めたり、リストを貼り付けるだけで簡単にカスタマイズできるなど、直感的な操作でアンケートの作成が行えます。さらにフォームに集まった回答はリアルタイムで集計され、自動的にグラフ化されるため、集計作業にかかる時間を削減できるのは大きなメリットです。
Google Forms®について詳しく知りたい方は、「Googleフォームとは?作成手順とアンケートのコツを解説」をご覧ください。
紙面でのアンケート調査は、調査対象者がモバイル端末を所持しているかどうかに関わらずアンケートを実施することができますが、Web上での実施と比べると集計は煩雑で、郵送や手渡しができない対象への調査は困難です。
調査票を作る
方向性と具体的な方法が固まったら、設問数や回答形式を考慮し、アンケート調査票を作成していきます。調査票の作り方について、詳しくは「成果が出るアンケート調査票の作り方は?具体的な作成ステップを解説」で解説していますので、ここでは回答方法と設問文の作成で工夫できるポイントを紹介します。
【回答方法の工夫】
アンケートの回答方式は、大きく以下3つにわけられます。
SA | シングルアンサー、単一回答 |
---|---|
MA | マルチプルアンサー、複数回答 |
FA | フリーアンサー、自由回答 |
このうちFA(自由回答)は記入に時間がかかるため、回答者に面倒と思われがちです。また、マトリクスが横長のSA(シングルアンサー)やMA(マルチプルアンサー)の場合は、回答者がスマートフォンを利用している場合、横にずらして選択肢を確認しなければならず、手間がかかってしまいます。
回答者の立場に立って、回答しやすい形式になっているかどうかを確認しながら形式を選びましょう。
【設問文の工夫】
誰にとっても誤解のない、短くわかりやすい表現で設問を作成します。
▼わかりやすい表現の原則
- 誤解を招かない表現を使う
- 回答者が容易に理解できる言葉で質問する
- 回答者バイアス(先入観や偏り)を避けた言葉で質問する
集計・分析を行う
回答を収集したあとは、主張を行うための集計・分析を行います。
単純集計
設問ごとに回答結果を集計し、何人が回答したのか、回答の内訳がどうなっているかを示す集計方法です。SA(シングルアンサー)、MA(マルチアンサー)質問の結果をまとめます。エクセルやGoogleスプレッドシートを活用すれば、容易に集計できます。
クロス集計
2つ以上の質問項目への回答内容をかけ合わせ、回答者属性ごとに反応の違いをチェックする集計方法です。クロス集計について詳しく知りたい方は、「クロス集計のやり方は?自社でアンケート結果を分析できるようになろう」の記事をご覧ください。
卒論アンケートに関するQ&A
最後に、卒論アンケートに関するよくあるQ&Aを紹介します。
依頼文は必要?何を書けばよい?
アンケート調査はお願いして協力いただくものであり、答えていただけるのが当たり前とは限りません。知人・企業に依頼してアンケート調査を実施する場合は、依頼文の作成は必要です。
依頼文には最低限、以下を盛り込んでおきましょう。
- あいさつ
- 実施目的
- アンケートの概要
- 質問数、所要時間
- 個人情報、収集データの取り扱い方
▼依頼文のテンプレート
以下は依頼文の例文です。テンプレートとしてご自身のテーマにあわせて活用してみてください。
このたびは、〇〇大学の[自身の氏名]、[共同研究者、指導教員の氏名など]が実施するアンケート調査にご協力いただきありがとうございます。△△というテーマの卒業論文の執筆にあたり、みなさまの□□□に対するご意見やイメージを伺いたく思います。
質問は全部で15問、うち3問は記述式、12問は選択式です。推定所要時間は10分です。
答えたくない質問があった場合は、飛ばしていただいても構いません。また、ご回答いただきました個人情報等については、卒業論文執筆のために利用し、第三者に提供することはございません。
アンケート調査は何人くらいに行うとよい?
母集団の一部から抽出した調査対象者数のことをサンプルサイズと呼びます。必要なサンプルサイズはアンケートの内容や目的によって異なりますが、100人程度が目安です。
サンプルサイズが小さいと、標本誤差が大きくなり、結果の精度が変わってきてしまいます。一方でサンプル数を大きく設定すると、そのぶん集計にかかる時間や費用など負担は大きくなります。
サンプルサイズが小さいと、標本誤差が大きくなり、結果の精度が変わってきてしまいます。一方でサンプル数を大きく設定すると、そのぶん集計にかかる時間や費用など負担は大きくなります。最終的には時間と費用のコストバランスを考慮し、必要なサンプルサイズを決定してください。
サンプルサイズについて詳しく知りたい方は、「適切なサンプルサイズが調査成功の鍵|計算方法や決め方を解説」の記事をご覧ください。
まとめ|自分の研究にあったアンケートを実施しよう
卒業論文を執筆する際は、自身の主張の裏付けや研究のオリジナリティを出す目的で、アンケート調査が実施されることがあります。
主なアンケート実施方法は「セルフ型アンケートツールの利用」「調査会社に依頼」「周囲の人に依頼」の3パターンありますが、求めるスピード感や費用、調査目的によって最適な手法は異なります。
学部生の卒業論文は、研究としては非常に短い期間で行う必要がありますが、大学生が使える費用や時間は限られています。また、多くの方が初めての調査実施となることから、思うような結果を得られず、追加調査を実施する必要が生じる可能性もあります。卒業論文にむけたアンケート調査は、トラブルを見越して早めに準備することが重要です。
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GMO Askは「“聞きたい”を誰でも、手軽に、簡単に。」をコンセプトとし、使いやすさとスピード感を追求したアンケート調査ツールです。1問1回答10円から利用でき、無駄な費用をかけずにアンケート調査を実施できます。
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【調査例】
- 認知度調査
- 意識調査
- 満足度調査 など
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よくある質問
Q1.セルフ型アンケートツールの特徴が知りたいです。 |
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セルフ型アンケートツールは、調査会社への依頼と比較すると、手軽かつスピーディに調査を行えます。一方、アンケート設計から集計・分析まで、すべて自身で行う必要があります。設問文やサンプルサイズの検討に不安がある場合は、サポートを受けられる調査会社への依頼も一手です。 詳しくは「1.セルフ型アンケートツールを利用する」の章をご覧ください。 |
Q2.卒業論文のアンケート調査を実施する際、依頼文はどのように書けば良いですか? |
依頼文には最低限、以下を盛り込んでおきましょう。
詳しくは「依頼文は必要?何を書けばよい?」の章をご覧ください。 |