市場にモノが溢れる現代、機能や品質が良いだけでは、顧客の心を掴むことができません。もし商品やサービスに対して顧客が感じている価値が低い場合、例えば競合他社の有力なサービスが出た時、そちらに流れてしまう可能性があります。
そこで重要視されているのが、CX(顧客体験)です。CXとは、顧客視点で見た、商品・サービスに対する価値や評価のことを指します。顧客視点の主観的な評価のため、可視化するのは難しいですが、アンケート調査を活用して定量的に顧客の声を数値化・分析すれば、顧客体験向上に向けた施策を立案できます。
この記事では、CX(顧客体験)の意味や重要性、顧客体験を可視化する方法を解説します。
顧客が求める顧客体験ってそもそも何?
近年、消費行動は「モノ消費」から「コト消費」にシフトしてきています。
消費者庁「消費者意識基本調査」(令和4年11月調査)によると、「今後(も)お金をかけたいと思っているものは?」という問いに対し、上位3つの回答は以下のとおりでした。現在の消費者は、形が残る商品の購入よりも、「どのような経験・体験をするか」に関心を抱く人が多いと推察されます。
▼「今後(も)お金をかけたいと思っているものは?」の回答上位3つ
順位 | 回答 | 割合 |
---|---|---|
1 | 食べること | 39.4% |
2 | 旅行 | 35.7% |
3 | 健康・リラックス | 33.6% |
参考:消費者庁「消費者意識基本調査」(令和4年11月調査)
市場にモノが溢れ、インターネット通販も盛んな今、消費者が欲しいと思うものは簡単に手に入るようになりました。また、CDや車などのサブスクリプションやシェアリングサービスなども普及し、モノを所有する必要性も薄れてきています。
単に商品やサービスの機能や品質を向上させるだけでは、他社との差別化ができず、顧客が満足する体験も提供できません。そのため、愛着や安心感、心地よさといった精神的な豊かさを得られる顧客体験「コト消費」を求める顧客が増えています。
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?
CX(カスタマーエクスペリエンス・顧客体験)とは、顧客視点で見た、商品・サービスに対する価値・評価です。顧客と企業との接点は、「認知」「検討」「購入」「利用」など何段階もありますが、CXは各接点での評価の積み重ね、いわば一連の顧客体験すべてに対する評価を意味します。顧客と企業の接点毎に評価し、評価の積み重ねは以下のようなチャートで表します。
本章では、CXを考える際に押さえておきたいポイントを2つ解説します。
顧客が何に価値を感じるか知ることが重要
「CXを向上させるために必要なのは、企業が顧客への共感を示すこと」と捉える方もいますが、そうとは限りません。もちろん、顧客に対する共感も重要な要素ではありますが、CXの本質は「顧客が企業との接触で体験した事柄に対する、顧客の主観的な評価」です。企業視点での共感ではなく、顧客が何に価値を感じているか、顧客視点を前提に考えていないと、価値観のズレが生じてしまい、逆に不満を抱かせてしまう可能性もあります。
全体を捉えつつ、かつ各接点ごとに着目し改善することが重要
「接客」「配送」「サポート」など、各接点の評価を「点」で捉えたCX改善は不十分です。なぜならCXの課題は、例えばコールセンターから物流など、異なるチャネル間に移行する過程で生じているケースが多いからです。CX改善に取り組む際は、企業と顧客との間で行われる一連のやりとりを「線」で捉え、企業全体で一貫したCXを提供することが重要です。
なぜCXが重要なのか?
顧客のロイヤリティ評価で一般的に用いられる指標には「LTV(顧客あたりの生涯売上)」や「継続利用年数」があります。しかし、これらの指標は顧客の行動だけに焦点をあてているため、顧客の主観であるロイヤリティを正しく測ることができません。
例えば、購買量が多い顧客のなかには「商品への愛着はないが、惰性で使い続けている」「そもそも契約していたこと自体忘れていた」という人もいるかもしれません。この場合、商品に対する満足度が高いとはいえないため、競合他社がより魅力的な商品を販売開始すると、顧客が一気に流れてしまう可能性もあります。逆に、継続して購入している期間はまだ短いものの、商品に対して強い愛着を抱く顧客がいるケースもあります。
購買量とロイヤリティは、必ずしも一致するとは限りません。正しくロイヤリティを計測するには、LTVや継続利用年数など顧客行動の指標で測るのではなく、CXそのものを評価することが重要です。
CXのさまざまな体験を理解することが重要
顧客は企業に対し、さまざまな感情を抱いています。良い評価を抱いていたとしても、伝えるのが煩わしいと感じているなど、自ら顧客体験を企業に伝える顧客は少ないです。また、万が一悪い評価を抱いていたとしても、「伝えても改善されないのでは」という思いが先行し、企業に伝えることなく利用を停止したり、他社サービスに乗り換えたりしてしまう場合がほとんどです。そのため、企業側が受け身でいては、顧客の声を得ることはできず、CX改善も難しくなってしまいます。
そこで企業が顧客の声を得るために効果的なのが、アンケート調査の実施です。例えば潜在層に対しては商品の認知度調査を行い、既にサービスを利用したことのある層には顧客満足度調査を行うなど、各プロセスごとに調査を実施することで、接点ごとに顧客の声を収集することができます。また、数値化して捉えるのが難しい顧客の声を定量的に捉えられるのも、アンケート調査の強みです。
【各プロセスでの調査例】
また、アンケート調査で得られた結果を数値化し分析すれば、改善要望が多い、もしくは改善余地のあるCXを定量的に把握できるため、勘や経験に頼らない施策立案につなげることもできます。
おすすめの調査方法は、調査企画・設計に時間をかけず、短期間で調査・評価を行い、次の段階へ進めていくアジャイルリサーチの流れで取り組むことです。アジャイルリサーチについてより詳しく知りたい方は、「アジャイルリサーチとは?メリットや具体的な活用法をご紹介」をご覧ください。
顧客体験を可視化するには、定量結果を把握することが重要|さまざまな指標を用いる
インターネットの普及により、Webサイトや広告、SNSなどさまざまな場所で企業と顧客間の接点が生まれるようになりました。顧客との接点が増えたぶん、得られるデータも多くなりましたが、部門の垣根を越えてCXを計測し、結果を数値化するのは大きな手間がかかります。
しかし先述の通り、CXを向上させるには、企業と顧客間の一連のやりとりを通じて満足度を高めることが重要です。そのためには、具体的に何を知りたいのか、何を計測すべきかを事前に明らかにして、CX計測から向上までの計画を立案・実行することが重要です。
顧客体験を可視化する指標
CXを可視化する主な指標は、以下の4つです。
顧客満足度(CS)
顧客満足度(CS)とは、顧客が商品やサービスにどれほど満足しているかを示す指標です。顧客満足度が高い顧客は、周囲の人物へサービス利用を推奨してくれるロイヤルカスタマーにまで成長する可能性もありますが、顧客満足度が高いからといって、リピーターになるとは言い切れないため注意が必要です。
顧客満足度は、多くの場合、インターネット・郵送・電話・座談会形式などでアンケートをとることで計測します。
NPS®
NPS®は、顧客に対して「この商品は家族や友人にどれほど薦められるか」アンケートに回答してもらい、その結果から顧客ロイヤリティを計測する方法です。従来では数値化が難しかった「企業への愛着や信頼度」を具体的なスコアとして把握できるため、顧客体験を正しく評価して改善する際に役立ちます。
商品・サービスを家族や友人に勧めたいか0〜10の11段階で評価し、(9、10点をつけた人の割合)ー(0〜6点をつけた人の割合)で算出します。詳細は、「ネットプロモータースコアの意味や自社の成長に役立てるポイントを解説」を参考にしてみてください。
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。
継続利用意向
顧客満足度と継続利用には、密接な相関関係があります。両方高いことが望ましいですが、どちらかが低い場合は原因が異なる可能性があります。
例えば「顧客満足度は高いが、継続利用をしない顧客」に対しては、自社商品のリピート購入や周囲への推奨など、行動ロイヤリティを向上させる取組が必要です。逆に、「顧客満足度は低いが、継続利用をする顧客」に対しては、商品やサービスに対する愛着・信頼といった心理ロイヤリティを高める施策が必要になります。
LTV
LTV(ライフ・タイムバリュー)とは、ひとりの顧客が自社サービスを初回購入(利用)してから終了するまでにもたらす価値のことを指します。LTVから利用期間・金額・購入頻度を分析することで、行動ロイヤリティを計測できます。
LTVについて詳しく知りたい方は「LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法やLTVの向上方法を解説」をご覧ください。
CX(顧客体験)を理解するために、調査を行う流れ
顧客体験に関する調査は、基本的に以下の流れで進めていきます。
▼顧客体験に関する調査の流れ
1 | 仮説を立てる |
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2 | 仮説を基に最適な調査方法もしくはアンケートの設問を決定する |
3 | 調査を行い、結果を分析する |
4 | 分析結果から課題点を見出し、改善する |
5 | 課題点が改善されているかどうかを調べるために調査を実施する |
顧客接点毎に調査が出来るツールの必要性
CXをより細かに把握するには、各接点や接点の合間ごと、短期間に素早く顧客調査を実施しPDCAサイクルを回すことが効果的です。しかし、紙やメールなど既存のツールを用いた調査では、結果のとりまとめに大きな労力を要し、分析にも時間がかかってしまいます。
そこでおすすめなのが、調査ツールの活用です。調査ツールを活用すると、調査依頼からデータとりまとめ、分析までスムーズに実施できます。また、アンケート設計時にテンプレートを活用すれば、より効率的にアンケート調査を実施できます。
GMO Askで簡単にアンケート調査!
GMO Askは、お客様ご自身で作成したアンケートを調査モニターに配信できるセルフ型のアンケートプラットフォームです。顧客体験の可視化に用いるデータをアンケートで得たい場合には、ぜひご利用を検討してみてください。
まとめ|顧客体験は顧客アンケート結果から可視化する
CX(カスタマーエクスペリエンス・顧客体験)とは、顧客視点で見た、商品・サービスに対する価値・評価です。CXが重視される背景には、消費者が精神的な豊かさを求める消費行動、いわゆるコト消費と呼ばれる顧客体験に価値を感じるようになったことがあります。
CXは顧客の主観的な評価のため、数値化するのは困難です。また、顧客が率先して自身の顧客体験を企業に伝えることはないため、顧客の声を待っているだけではCX改善への糸口を掴むことができません。しかし、顧客との接点ごとにアンケート調査を実施すれば、顧客の声を定量的に捉えることができるだけでなく、CX改善の施策立案に役立てることができます。
よくある質問
Q1.CX(カスタマーエクスペリエンス)の意味は? |
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CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)は、顧客視点で見た、商品・サービスに対する価値・評価です。「認知」・「検討」・「購入」・「利用」など、各接点での評価の積み重ねで、いわば一連の顧客体験に対する評価を意味します。 詳しくは「CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?」をご覧ください。 |
Q2.顧客体験を可視化するための指標の例は? |
顧客体験を可視化するための指標の例は、以下の4つです。
詳しくは「顧客体験を可視化する指標」をご覧ください。 |